「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」 第47条の5

1 教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校のうちその指定する学校(以下この条において「指定学校」という。)の運営に関して協議する機関として、当該指定学校ごとに、学校運営協議会を置くことができる。
2 学校運営協議会の委員は、当該指定学校の所在する地域の住民、当該指定学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者その他教育委員会が必要と認める者について、教育委員会が任命する。
3 指定学校の校長は、当該指定学校の運営に関して、教育課程の編成その他教育委員会規則で定める事項について基本的な方針を作成し、当該指定学校の学校運営協議会の承認を得なければならない。
4 学校運営協議会は、当該指定学校の運営に関する事項(次項に規定する事項を除く。)について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる。
5 学校運営協議会は、当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。この場合にいて、当該職員が県費負担教職員(第五十五条第一項、第五十八条第一項又は第六十一条第一項の規定により市町村委員会がその任用に関する事務を行う職員を除く。)であるときは、市町村委員会を経由するものとする。
6 指定学校の職員の任命権者は、当該職員の任用に当たつては、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする。
7 教育委員会は、学校運営協議会の運営が著しく適正を欠くことにより、当該指定学校の運営に現に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合においては、その指定を取り消さなければならない。
8 指定学校の指定及び指定の取消しの手続、指定の期間、学校運営協議会の委員の任免の手続及び任期、学校運営協議会の議事の手続その他学校運営協議会の運営に関し必要な事項については、教育委員会規則で定める。



条文説明
第1項(学校運営協議会の設置)
 教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校のうちその指定する学校(以下この条において「指定学校」という。)の運営に関して協議する機関として、当該指定学校ごとに、学校運営協議会を置くことができる。

 今回の学校運営協議会は、地域に信頼される学校づくりを実現するため、公立学校運営の在り方の選択肢を拡大するものであり、学校運営協議会を設置する学校の指定については、学校の管理運営の最終的な責任を有する教育委員会の責任において判断されるものです。その際、各教育委員会は、地域の特色や学校の実態を踏まえつつ、地域の住民や保護者の要望を的確に反映して指定を行う必要があります。
 なお、学校運営協議会を設置する対象となるのは、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園です。

第2項(学校運営協議会の委員)
 学校運営協議会の委員は、当該指定学校の所在する地域の住民、当該指定学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者その他教育委員会が必要と認める者について、教育委員会が任命する。

(1)学校運営協議会は、学校運営及び任命権者の任命権の行使の手続に関与する一定の権限が付与される機関であることから、その委員については、設置者である教育委員会の責任において人選が行われ、任命されることになります。
 その際、幅広く適任者を募る観点から、例えば、公募制の活用等選考方法を工夫するとともに、地域の住民や保護者等へ広報、周知に努める必要があります。
 なお、地域の住民、保護者以外の委員については、学校運営協議会が設置される学校の校長、教職員、学識経験者、関係機関の職員等が想定されます。

(2)委員については、公立学校としての運営の公正性、公平性、中立性の確保に留意しつつ、適切な人材を幅広く求めて任命するとともに、学校運営協議会において合議体として適切な意思形成が行われるよう、研修等を通じ、委員が学校運営協議会の役割や責任について正しい理解を得るよう努める必要があります。

(3)学校運営協議会の委員は、特別職の地方公務員の身分を有することになります。なお、委員については、児童・生徒や職員等に関する個人的な情報を職務上知り得る可能性があることから、教育委員会規則において守秘義務を定めるなどの適切な対応が必要です。

第3項(学校運営に関する基本的な方針の承認)
 指定学校の校長は、当該指定学校の運営に関して、教育課程の編成その他教育委員会規則で定める事項について基本的な方針を作成し、当該指定学校の学校運営協議会の承認を得なければならない。

(1)学校運営協議会が行う承認は、学校運営協議会を通じ、地域の住民や保護者等が、校長と共に学校運営に責任を負うとともに、校長が作成する学校運営の基本的な方針に地域の住民や保護者等の意向を反映させる観点から行われるものです。

(2)校長は、承認された学校運営に関する基本的な方針に沿い、その権限と責任において教育課程の編成等の具体的な学校運営を行うことになります。

(3)教育課程の編成以外の学校運営に関する基本的な方針の対象となる事項としては、一般的には、施設管理、組織編成、施設・設備等の整備、予算執行等に関する事項が考えられますが、具体的には、地域や学校の実態等に応じて教育委員会規則において定めます。

第4項(運営に関する意見の申し出)
 学校運営協議会は、当該指定学校の運営に関する事項(次項に規定する事項を除く。)について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる。

 学校運営協議会は、学校運営に関して協議する機関として設置されるものであることから、基本的な方針の承認に止まらず、当該学校の運営全般について、広く地域の住民や保護者等の意見を反映させる観点から、教育委員会又は校長に対して主体的に意見を申し出ることができる旨を明確にしたものです。

第5項(教職員の任用に関する意見)
 学校運営協議会は、当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。この場合において、当該職員が県費負担教職員(第55条第1項、第58条第1項又は第61条第1項の規定により市町村委員会がその任用に関する事務を行う職員を除く。第9項において同じ。)であるときは、市町村委員会を経由するものとする。

(1)地域に開かれ、信頼される学校づくりの観点から、地域の住民や保護者等の学校運営に関する要望がより一層反映されるよう、当該学校の教職員人事について、地域の住民や保護者等が学校運営協議会を通じて直接任命権者に意見を述べられることとしたものです。

(2)本項の対象となる「職員」とは、校長、教頭、教諭、養護教諭、学校栄養職員及び事務職員その他当該学校の職員がすべて含まれます。

(3)本項に基づく学校運営協議会の意見は、当該学校の運営の基本的な方針を踏まえて実現しようとする教育目標、内容等に適った教職員の配置を求める観点からなされるものであり、一般的、抽象的な意見及び特定の職員についての具体的な意見のいずれについても述べることができます。また、「採用その他の任用」とは、採用、転任、昇任に関する事項であり、分限処分、懲戒処分などについては本項に基づく意見の対象とはなりません。

(4)校長、教育委員会においては、学校運営協議会が本項に基づく意見を述べようとするに当たって、適切な意思形成を行えるよう十分な情報提供に努める必要があります。

(5)学校運営協議会を設置する学校に関しても、現行の市町村教育委員会の内申権、校長の意見具申権には変更は生じません。したがって、学校運営協議会の意見の有無や内容にかかわらず、校長は意見具申を行うことが可能であるとともに、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の内申をまって任命を行う必要があります。その際、市町村教育委員会は、内申の内容について、学校運営協議会の意見の内容との調整に留意する必要があります。

(6)県費負担教職員に関する学校運営協議会の意見については、設置者としてその内容を了知しておく必要があることから、手続上、市町村教育委員会を経由して都道府県教育委員会に提出されるものであり、市町村教育委員会においてその内容が変更されるものではありません。

第6項(教職員の任用に関する意見)
 指定学校の職員の任命権者は、当該職員の任用に当たつては、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする。

(1)学校運営協議会の意見は、任命権者の任命権の行使を拘束するものではなく、任命権者は、最終的には自らの権限と責任において任命権を行使するものですが、任命権者においては、学校運営協議会の意見を尊重し、合理的な理由がない限り、その内容を実現するよう努める必要があります。

(2)なお、第5項に基づく学校運営協議会の意見と異なる内容の任命権の行使を行う場合には、その理由を明らかにするなど説明責任を果たす必要があります。

第7項(指定の取り消し)
 教育委員会は、学校運営協議会の運営が著しく適正を欠くことにより、当該指定学校の運営に現に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合においては、その指定を取り消さなければならない。

(1)学校運営協議会の活動により当該学校の運営に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合には、教育委員会は、指定を取り消し、教育活動の円滑な実施が損なわれないようにしなければなりません。
 なお、指定の取消しを行う必要がある場合として、学校運営協議会として意思形成が行えない場合等が想定されますが、取消し事由については、あらかじめできる限り具体的に定めておくことが望ましいと考えられます。

(2)教育委員会は、学校運営協議会の運営の状況について的確な把握に努めるとともに、必要に応じて学校運営協議会及び校長に対して指導、助言を行うなど、学校運営協議会の円滑な運営の確保に努める必要があります。

第8項(諸手続に関する教育委員会規則の定め)
 指定学校の指定及び指定の取消しの手続、指定の期間、学校運営協議会の委員の任免の手続及び任期、学校運営協議会の議事の手続その他学校運営協議会の運営に関し必要な事項については、教育委員会規則で定める。

 学校運営協議会の運営に関する事項については、地域の実態や学校の実情なども踏まえ、各教育委員会の判断で柔軟な運用が可能となるよう、教育委員会規則において定めることとしているものです。
 各教育委員会は、公立学校としての運営の公正性、公平性、中立性の確保に留意しつつ、責任をもって定めるとともに、その内容について広報、周知に努める必要があります。

(1) 「指定及び指定の取消しの手続並びに指定の期間」
 指定及びその指定の取消しの手続については、地域の住民や保護者の意向等を適切に反映したものとするとともに、その基準等についてあらかじめ定めておくことが望ましいと考えられます。具体的には、学校の指定の際、あらかじめ当該地域の住民や保護者から意向を聴取することなどが考えられます。
 また、指定の期間ごとに学校運営協議会の活動状況や当該学校の運営状況等を確認、評価し、当該学校の運営の改善を進める必要があります。

(2) 「学校運営協議会の委員の任免の手続及び任期」
 学校運営協議会の委員については、委員の構成、人数、選考方法等も含め、任免に当たっての必要な規定を整備する必要があります。また、任期ごとにその活動状況を把握し、適任者の任命に努めることが必要です。

(3) 「学校運営協議会の議事の手続」
 学校運営協議会は、合議制の機関として意思決定を行うものであり、開催の手続、議長の選出、議決方法などについてあらかじめ規定することが必要です。

(4) 「その他必要な事項について」
 その他教育委員会規則で定めることが必要な事項としては、守秘義務等委員の服務に関する事項、学校運営協議会の運営の評価に関する事項などが考えられます。



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